黒い髪、華奢な体、禍々しいイレズミ、すこし大きな学ラン


「いやー、実にいいなぁ、おい。最高だね。今日という日はきっとオレのために作られたんだな」

どさり、机の上におかれたそれは鮮やかな色のリボンや紙でラッピングされた、まさしく、バレンタインのチョコレートという代物だった。


「それは、よかったね」
「そっけないなぁ、祝ってくれよ」
「何を」
「オレのためにある今日という日を」
「ばーか」

がちゃん、ドアを閉めた。いや、それは当たり前か。なぜなら私は外に出たから。なんで私が外にでなくてはならないのだろう。ここは私の家なのに。なんで出たのだろう。あ、そっか。俊希が煩いからだ。でもそれって、

がちゃん、再びドアを開ける。

「出てって」
「あ?なんでだよ」
「私の家だから」
の家はオレの家だろ」
「・・・」

断言されたら、少し何も言えなくなる。

「なんでそうなるの?」
が好きだから」
「・・・家に帰りなさい」
「なんでだよ」
「家族が心配なさるでしょ」
「大丈夫だよ、連絡入れたから」
「なんて」
「今日はバレンタインなので彼女の家に泊まります、ってな」
「家族さんはなんて?」
「『彼女!?待ちなさ』、ぶちっとね」
「最低」
「なんでだよ」
「てゆーかいつから私は俊希の彼女?」
「今日から」
「聞いてない」

私の手を引っ張って耳元に口をよせる、そして片手を私のポケットへ。

「もしくは、生まれた瞬間から」
「最悪な人生だね」

ポケットから取り出したそれは、まさしくバレンタインのチョコレートという代物だった。

「オレにだろ?」
「違うよ」

「は?じゃあ誰にだ」
「誰でしょう」
「からかうなよ」
「欲張りはだめ」
「欲張りじゃねぇよ、来るものを拒まずなだけだ」
「それってかっこ悪い」
「ほっとけ」

そんなやり取りをしながらも、そのチョコレートの可愛らしいラッピングは剥がされていく。

「食べたい」
「は?オレのだろ。やらねぇよ」
「だって高かったし」
「手作りじゃないのか」
「あーん」
「はーい、って反対だろ」
「美味しい。さすが」
「なにっオレにも食わせろよ」
「自分で食べなよ」
「お前が言うな」

俊希のひざの上でもぐもぐとチョコを食べる。見上げるとむすっとした顔をする俊希の顔がすぐそこに。

「ねぇねぇこれってひざまくらだ」
「だから普通反対だろ」
「・・・ちゅーしてほしい?」
「・・・ふぅ」

ちょっと挑戦的に言ってみたら俊希はため息をついて頭をぽりぽりかいた。

「その目、反則」

目の前が真っ暗になった。









甘い甘い、想いはチョコに伝わって






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