なんだか外の空気を吸いたくなって、外に出てみた。ウィンドウショッピングなんて久しぶり。まぁ、本当は見てるだけなんて嫌だけど残念ながら私のお財布は今とても寂しい状態だからやむを得ない。きちんとバイトしてるのになんでこんな状態になるのかっていうのは、この町並みを見ればわかる。
町は賑やかなクリスマス色だ。


















来るはずのない人への


クリスマスプレゼント


買いました。





















それにしてもクリスマスの町並みはすごい。いちいちイルミネーションがある。なんて綺麗なんだろう、と思うけどわざわざこれをつける人も大変だな、なんて年寄り臭いことも考えてしまう。きゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐ子達みたいにただただこの行事を喜べたら良いのに。
てくてくとただ歩いているといつの間にか人気のない公園に来ていた。

その公園はひっそりとしていて、一つ、大きな大きなクリスマスツリーがイルミネーションもなく、星さえもなく、たたずんでいた。
誰も写真に撮られることもなく。

はぁ、と息を吐くともわっと白い息が上がった。とりあえずベンチに座ってあったかいコーヒーを飲んだ。



「よぉ」



ばっ!と後ろを振り向くとそこには誰もいなかった。
なんだ、空耳。

当たり前、彼はいるはずない。なのに、プレゼントを買って、どこかで待ってる私がいる。



「かっこ悪い・・・」

「あぁ?」

「え」



どん、と当たり前のように隣に座る彼。



「な、なんで」

「オレのどこがかっこ悪ィんだよ」

「・・・いや、別に人識のことを言ったわけじゃないんだよ」

「ん?じゃあ誰のことだ?」



人識はさっと、私の手からコーヒーを取って飲むとにがっと言って私に返した。



「ココアにしろよ、ココア。冬はココアだろ」

「嫌よ、子供じゃあるまいし」

「・・・オレだって子供じゃねぇよ」



そう言ってもう一度コーヒーを取って全部飲んでしまった。



「・・・そう、てゆーか、なんでここにいるの?」

「あ?戻ってきたんだよ」

「な、なんで」

「クリスマスだから」

「・・・」

「嬉しいだろ?」



かはは、といつもの笑いをこぼしてぎゅっと片手で私の頭を抱いた。こてっと人識の頭が私の頭の上に。



「いや、実は色々一段落してな。ちょっと暇で外に出てみるとクリスマスじゃねぇか。町はクリスマスムード一色で恋人たちが幸せそうに歩いてるわけよ」

「・・・」

「何か言えよ。そんなに嬉しいのか?」



にやり、と笑う人識の顔。思わず顔を伏せてしまう。

嬉しいよ、嬉しいから、



「でも、いいの?」

「あ?何が」

「クリスマスは…家族と過ごすって手もあるじゃない」

「うーん…」

「ただでさえ家族思いで有名の零崎一賊ともあろう人が」



嬉しいのを隠すために無理矢理に言ってみせる。無茶苦茶だ。我ながら少し無理なこと言ってるとは思ったが(零崎一賊にクリスマスなんてないだろう)それしか思いつかない。てゆーか、頭も回らない。



「そうだなぁ…兄貴もうるせぇし…」

「…」

「可愛い妹もできたことだし…」

「…」



ちらり、と横目で私を窺う人識。わざと意地悪なことを言ってる。でも、私今どんな顔してるんだろう。



「でもさ」

「…」

の家族はオレ一人だろ?」

「…は?」

「なんだよ。せっかくキメ台詞言ったんだからもっといい反応しろよ!涙ぼろぼろ流して飛びつくとかさぁー」

「キメ台詞だったのね。てゆーかそんなことしないし」

「つまんねー。お前オレが今何言ったか分かってんの?」

「分かってるよ」

「分かってねー。絶対分かってねー」

「何よ、じゃあどういう意味?」

「…」

「?」

「あぁ、もういい!」

「ちょ、人識どこ行くの!?」

「ココア買いに行くんだよ!さっきのコーヒーの後味が残ってんだよ!」



人識は頭をぼりぼりかいてベンチから立ち上がって、そのまま行ってしまった。



「自分で飲んだんじゃん…」



それにしても、どういう意味?そのままでしょ?私の家族は、人識しかいない。そりゃそうだよ。私には、家族なんて、…。



「…ちょっと待って」

「ほら」

「わっ、びっくりした。なんで後から来るの」



人識は一つ、ココアを私に渡して自分もココアを開けた。



「後に自販機があるんだよ」

「…」

「で、何がちょっと待って?」

「いや…」



頭の中でいろんなことを整理しながらココアを開けて、飲んだ。一気に流れ込んできたそれは普通に飲める温度ではなく、案の定私は舌を火傷した。だけど、妙に懐かしい味だった。



「熱っ」

「少し冷まして飲めよ、ほら」



そして自分のココアと私のココアを交換する人識。



「こっちは多分飲める。猫舌だろ」

「…うん」



久しぶりに感じる、人識の小さな優しさがすごく心地よかった。人識から受け取ったココアは、丁度良いくらいの温度になっていて私はごくごくとそれを飲んだ。



「ねぇ、人識」

「あ?」

「さっきのだけど…」

「…あぁ、別に忘れて良いぞ」

「え?」

「確かにちょっと分かりにくかったかもしれねーし」

「…いや、それが…」

「ん?」

「分かったってゆーか…ね、多分」

「…そ」



人識はそれでも何事もなかったようにココアを飲む。だけど、



「熱っ」

「…ぷ」

「笑うなよ」



照れてる人識。(照れ隠しで眉があがってるけど)本当に、全く同じことするなぁ。あせってココアを飲むと熱いんだよ。そしてお互いベンチに正座して向き合う。



「…ごほ、…そんで?」

「…」

「…あー…えっと…改まると恥しいんだけど」

「恥しいって言われると恥しくなるからやめてよ」

「だって恥ずいじゃん」

「そうだけど…」

「えー…だから、の家族はオレだけだろ?」

「…うん」

「…だからー…なんてゆーか、な」

「な、じゃ分かんないよ」

「さっき分かったって言ったじゃねーか」

「やっぱり分からないー」

「…」

「何?」

「つまり、ウェディングドレスを着ねぇかってこと」

「何それ」

「…つまり、指輪を交換しませんか、と」

「もう」

「だから、…結婚、しよ」

「…」

「…する?」

「する、よ」

「…だよな」

「何それ」

にはオレしかいねぇじゃん」

「人識にも私しかいないじゃん」

「そんなことねぇよ」

「例えば?」

「…ちゃんとか?」

「誰よちゃんってー」

「え、いや、冗談だって」

「はっ、どーだか」

「いやいやまじで冗談」

「…誓える?」

「誓える」

「…」

「ちゅー、してい?」

「…」

「てゆーか、すっから」



ぐい、と引き寄せられて、キスをする。深く、甘く。舌が絡み合う…のは、いいけど、でも、ちょっと、



「人識、痛い…舌が…火傷が…」

「…オレも」

「…」

「…いいんじゃねぇ?あまりにもオレらがアツアツで火傷したんだよ」

「…ぷ」

「笑うなよ」



もう一度、キスをする。いつからこんなにキスが上手くなったんだろう。まさか本当にちゃんとかいう女と…なんて、そんなわけないか。



「人識、プレゼント」

「え、何、クリスマスプレゼント?さんきゅ」

「はい」

「…え、これどうすんの?」



私があげたのは大きな星。そう、普通はツリーのてっぺんにつける星。



「あまりにも綺麗だったからあげようと思って」

「でも用途がさぁ…あ、ここにいいんじゃねぇ?」

「え?」

「ほら」



人識が指したのはここにあるただ寂しげなクリスマスツリーだった。



「いい。ナイスアイデア。つけて、人識」

「え、まじで?すっげぇ高ぇよ?」

「大丈夫」

「落ちたら怪我するよ?」

「人識は落ちたりしない。信じてる」

「そんなところ信じられてもなぁ…ま、落ちねぇけど」

「もし落ちてもキャッチしてあげるよ」

「なんで女に受け止めてもらうんだよ。普通反対だろ。ぜってぇやだ」

「じゃあ頑張って落ちないで」

「…分かりましたよ、よいしょ」



散々嫌がってたくせに、人識は意図も簡単にツリーのてっぺんまで行って、星をつけた。その星は元からここにあったんじゃないかってくらいこのツリーにぴったりで、街中にあったどのツリーよりも、どのイルミネーションよりも一番輝いて見えた。



「おしっ」



すとん、と降りる人識



「よくできました」

「こんなん朝飯前だ」

「…そういえば、ご飯の時間だね」

「お、もうそんな時間か。じゃあ帰るか。久しぶりにの手料理でも」

「最近本当に作ってないから、どんなのができても知らないよ」

「いいじゃん。新婚の醍醐味だろ?」

「何それ」

「かはは、帰るぞ」



そう言って人識は私の手を引いた。帰る。そうだ、帰ろう。
二人の家に。



「ねぇ人識、クリスマスプレゼントは?」

「…」

「ねーぇ」

「…ココア」

「何よそれー!」


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