今すぐ会いに、飛んできて


















ふらふらとした足取りで、でも確実に、私は歩いていた
現実はとても残酷で、目を伏せたいことばかりだった
例えば、近所で話題になっている通り魔殺人とか

何人殺せば気が済むのだろう
いや、そういうことじゃないと、何故か私には分かった
気を済ませるために殺しをするのではない
根本的に、違う

綺麗に、鮮やかに、金属と血と肉が反射しあう
夜の少ない光に当てられて輝くそれはとても死体とは思えなかった

相変わらず、それが殺人でなければとても綺麗な作業だった
無駄のない動き、まるで魚をさばくように
手の中のナイフが回転する

「おせーよ。暇だから殺ちゃったじゃん」

『これでもバイトで疲れた足を必死で動かしてきたんだけど』

「それはそれは、ごくろーさん」

人識に寄りかかる
私は睡魔と疲労で今にも倒れそうだ

「まじで疲れてんなぁ」

『それよりなぁにー急に呼び出して』

「・・・」

『?もしかして、別に何もないとか』

「・・・」

『ちょっと待ってよ・・・本当に?・・・あ、無理』

そこで私の記憶は途切れた

あぁ、時給がいいからって引越しセンターなんてするんじゃなかった


「おー、起きたか」

ことことと暖かい音がする、においもする
目の前にはにやにやと相変わらずゆるい笑顔を浮かべた人識だった

『何、してんの』

「介抱だよ、急に寝ちまうし」

『え?あぁ・・・』

やっと思い出した

『人識が悪いんだよ・・・急に呼び出したりして、何事かと思うじゃん』

「・・・会いたかったんだよ・・・だぁー、そういう顔すんな、まじやめろ。分かった分かった、オレが悪かった」

『人識って思ったよりも私のこと好きなんだ』

「そーだよ、悪いかよ」

『ううん全然、こうやって介抱してもらえるし』

「にしても、無理しすぎじゃねぇか?」

『うん・・・ちょっと今回は失敗だね』

「なんでそんなバイトすんだよ」

『だって暇なの嫌いなんだよね、体とか動かしてないと余計なこと考えちゃって』

「煩悩?」

『ん、まぁそうだね』

「それはオレのことだな、つまり」

『人識があんまり人を殺すから頭おかしくなっちゃったんじゃないかと思ってね』

「おいおい、オレは元からおかしいぜ」

『そういえばそうだったね』

フォローしろよ って軽く頭を小突かれた

結局お互い、会いたくて仕方なかったってこと

「人間、煩悩は決して消えねぇなぁ」

そうしてまた絡める指と唇
溢れ出してやまない愛を満たすため

「久しぶりだ」

『溜まってた?』

「めちゃくちゃ」

ぷっと二人で吹き出す
そして人識が慌てて立ち上がる

「やべ、飯作ってんだった」

そういえばそんな香りがしてる

『本当に?ありがとー嬉しいな』

「普通は女が作るもんだろ」

『私何も作れなぁーい』

「勉強しろよ。そんなんじゃオレの嫁になれねぇぞ」

『じゃあ、いーちゃんの嫁になる』

「ふざけんな」

人識は料理中なのか、顔をのぞかせた時包丁を持っていた
こわ・・・殺人鬼が包丁持つと何かしそうな気がする

「あいつには嫁がいんだろ」

『うん、失恋しちゃった』

がちゃんと食器の音がして人識がこっちに来た
顔がむすっとして明らかに不機嫌
ちょっと悪ふざけが過ぎたかな
顔が、人識の顔が、私の顔の目の前に
あと数センチ・・・否、数ミリ?

『慰めてくれるの?』

「忘れさせてやるよ」

また、熱いキスをした
今度は本当に長くて苦しかったけど、ここで拒否したら人識の機嫌はさらに悪くなってしまう

『そんな、怒らなくても・・・』

「頬が赤いぜ?」

『苦しい、から』

「嘘つけ」

そう言って人識は赤い舌をべっと出して、私を押し倒した
そしてその舌を私の首筋に

『ひぁ、ちょ、くすぐったい』

「美味い」

こうなると人識は何かないと止まらなくなる
何か、何か

何か、くさい

『ね、人識』

「あ?今いいとこなんだけど」

そう言って人識はますますと言った感じに舌を首に這わせて手はするりと私の体をなぞる

『なんか焦げ臭いんだけど』

「・・・げ」

慌てて起き上がり台所へ行く人識
助かった

別に嫌なわけじゃないけど、疲れてるし

そして人識はテーブルにせかせかと料理を並べた

『わーい、美味しそう・・・』

「タイミング悪ィ」

『なぁに言ってるの、早く食べよ』

「おう」

『いただきます』

「いただきます」

人識のご飯は美味しくて、久しぶりに食べると本当に涙が出そうで
懐かしかった
毎日こんなに美味しいご飯を食べれたらいいのに

「美味いか?」

『めっちゃくちゃ美味しい!』

「大袈裟だな」

そう言うけど、人識と一緒にテーブルを囲んでご飯を食べると何でも美味しく感じる程(いや、決して人識の料理が不味いわけではないよ)幸せだった

「オレはが食いたいんだけど」

『え』

ちらりと顔をのぞけばにやりと笑う人識

『いやー・・・いちよう病人だし・・・勘弁してよ』

「オレが我慢できねーよ」

『何それ・・・せめて一回寝かせて』

「さっきも寝ただろう。オレがどれだけ我慢してたか」

『・・・』

「我慢できなくてちょっと色々したけど」

『何、ちょっと色々って!』

時々寝苦しかったのはそのせいか!
どんだけ溜まってんだよ・・・

「聞きたいのか?」

にやり、また笑う
そのいやらしい笑みをどこで覚えて来たんだろう
あぁそうか
そんな笑顔をふりまく人もいましたね

『いえ、結構です』

「で、結局どうなんだよ」

にっこりと私は笑顔を作り、家を飛び出した
向かう先は、唯一私を助けて、守って、愛してくれる人

「おい、待てこら!」

人識は慌てて鍵を閉めて後から追ってきた
やばいよ、人識足めちゃくちゃ速いもん
まぁ歩幅は私のがあるけど

危機一髪、間一髪、私はその人の家へと入り込んだ

「何、騒がしい」

冷たく言い放ったその人は後ろから追ってくる人識を見てあぁと気づいたように私を背中へ隠し、ドアを閉めた

『いーちゃん・・・助けて・・・』

息が切れてきつい
まったく・・・疲れてるのに
こんなに全力疾走したのは何年ぶりだろう

「大丈夫?ちょっと休んでなよ」

そう言ういーちゃんはとても優しくて、もうやっぱり人識を選ぶんじゃなかったと後悔をした

『ありがと・・・もう・・・私・・・めちゃくちゃ・・・いーちゃん好き・・・』

「それはどうも。もうそろそろ来るよ」

途端にドアが開くけたたましい音

「やっぱりここか・・・」

いーちゃんの背中で休憩をしている私を見て言う
私はわざとらしくいーちゃんの背中にくっつく

『いーちゃん・・・助けて・・・』

「欠陥製品、やりすぎだ」

「全然ヤってねぇ!」

『いや・・・そういう意味じゃないから』

は疲れてるんだろ・・・少しは大人になれ」

「オレは十分大人だ」

『子供だよ・・・』

「とにかく、ほとぼりが冷めるまでに触るのは禁止だ」

「はぁ!?なんでお前にそんな決められなきゃならねぇんだ!」

はぁ と、わざとらしく深くため息をついてみせる

『ここで引かなかったら一生人識のこと好きになれないと思う』

だいぶ息が整ってきたので、声のトーンを下げて言ってみた
もちろん睨みも効かせて

「・・・・・・わかったよ・・・何もしねぇ・・・」

「よし、じゃあお前は帰れ」

「あぁ!?」

「信用できないんだよ・・・なんせ、僕の鏡だからな」

「・・・はぁー・・・ついてねぇな・・・」

人識はやっと収まったようで、頭をかりかりと掻くと 仕方ねぇから今日は引く と言って帰って行った
その後姿を見ると何度も走り出して抱きしめたくなったけど、堪えた
そんなことしたらただで済む分けない

、大丈夫?」

『うん・・・ありがとう・・・いっつもいーちゃんには迷惑かけてばっかりで』

「そうだね」

『・・・ごめんね?』

「いいよ」

そうして、私はいーちゃんのもとで熟睡したあと、人識の元へ帰っていった
家に帰ると、もう夜だというのに電気がついてなくて、人識が座っていた

『何してるのー?』

「・・・」

これは怒ってるな

『電気ぐらいつけなよ』

人識の背中に抱きつく

『ただいま』

「・・・」

返事はない

『もう・・・せっかく戻ってきたのに・・・』

「・・・なんで、そんなに嫌がるんだよ」

こういうこと言う時、人識はどうしようもなく可愛い

『・・・だって、疲れてたんだもん・・・』

「・・・」

『そんな疲れた状態で、ねぇ・・・』

「・・・」

『するわけにもいかないし』

ぎゅっと抱きしめる力を強めた

すると振り返る人識の顔
突然のキス

「もう十分休んだんだよな?」

『・・・え、まぁ』

「じゃあ、たっぷりと頂くぜ」

そのまま私は押し倒された
今休んだばかりなのに








愛を求めてやみません。大切な貴方を失いたくなくて





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