なつかしいにおいがした

君はそこにいた































素敵な素敵な殺人鬼

























「よぉ、久しぶり」

本当に、どれだけ久しぶりだろう

私の前に存在しているその殺人鬼は罰の悪そうな顔で言った

その懐かしい香りと相変わらずの可愛らしい背と顔
そしてその顔にはやっぱり、禍々しいイレズミがあった
がっちりとしたベストには、走ると金属音が鳴りそうだ
耳には携帯ストラップ

人間離れした容姿はどう考えても一般人ではなかった
(殺人鬼から見ても殺人鬼離れしているような気はするが)

「何しに来たの?」

本当は喜んで飛びつく方が、人識にも私にもよかったのだろうけど、私はわざと人識の言葉に冷たく応える

「私はもう一般人なんだから」

「……零崎を棄てても、やってることは一緒だろ」

知ってたのか、とため息をついてみせる

「当たり前だ。身長が低い可愛い男ばかりを狙っての殺人ってのは、の俺へのあてつけとしか思えねーし」

「まぁそう思ってくれて結構だよ」

「まだ怒ってんのかよ」

「それは、今からの人識クンの対応によるかな」

「…やっぱり来なきゃよかったか」

「え?」

「や、兄貴たちが行けってうるせーんだよ。なんか知らねぇけど、勧誘されてんだって?」

「…そこまでバレてるんだ」

「兄貴が這いずり回ってを探してたからな」

「…それはお兄ちゃんに悪いことをしたね」

「兄貴には素直だな」

「お兄ちゃん思いなんだよね」

「弟想いにはなんねぇの?」

「どうだろうねぇ…」

「悪かったよ」

突然に、唐突に、人識は私の目を見ていった

が、すぐに目線を下にそらす

「出夢には渡さねぇ」

「匂宮から誘われてるってのも知ってるわけね」

「詳しいことは知らねぇけど、どうやら出夢がお前にお熱らしいじゃねーの」

「十分詳しいよ」

「詮索は得意なんだ」

「…だから、止めに来たんだ?」

「…もちろん、それだけじゃねーけど」

「何?」

「…あー…だからー…そろそろ、俺が限界なんだよ。がいないのは。」

「…へぇ、ありがとう」

「ここまで言ったんだから戻って来いよ?」

「当たり前だよ、私の可愛い弟クン」

「弟はやめろって言ってんだろ、俺ものことを姉と呼ぶぞ」

「それは光栄だね。私のことを姉と思ってくれるんでしょ?」

「俺にとってだ。だから、馴れ馴れしくくっついてくるのもやめろ」

「さっきまでは弟思いにならないの?とか言っておきながら調子いいね」

「俺はが弟想いになってくれるのは結構だぜ?俺も姉想いではあるし」

「私は弟思いだけどね」

「それなら遠慮するね。弟とみられちゃあ、弟想いには程遠いからな」

「まぁせいぜい頑張るんだね、弟クン」

と、刹那
人識のホルスターが揺れたのが分かった

私だって、名を棄てても殺人を続行している身だ
体が鈍ってはいない


カキン


と、金属音

私のナイフと人識のナイフが絡み合う

「くそー、まだ俺のが弱いのか」

「わかんないよ、五分五分かも。試してみる?」

「やめとくよ、と殺り合ったらどちらかが絶対死ぬ」

「そうかな」

「そうだろ。お互い、楽しいことは止められない性質(たち)なんだから」

「そうだったね、前は…お兄ちゃんが止めてくれたんだっけ」

「あぁ、その時は俺が今にも死にそうだったからな」

「今殺ったら、どっちが死ぬかな」

「…頼むからその挑戦的な目は止めろ。とりあえず、血眼で捜している兄貴に顔見せしてやれ」

「人識も、兄思いだよね」

「あ?んなわけねぇだろ」

阿呆なこと言ってないで行くぞと人識は手を差し出した

私はもちろんその手をとる


小さい手
背も小さいけど手も小さいね

こんな手で人殺しができるのだから不思議なものだった


私が、匂宮に行こうとした理由は出夢から気に入られてただけじゃなくて

実は、君と禁断の愛にならないためにっていうのもあったんだけど

まぁ、いいか

血がつながってないんだからなんでもアリだ

そう思い、私はその禍々しいイレズミに唇を当てた




"A wonderful wonderful murderous fiend" The end...





































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