何も隠し事がないって、いいことばかりじゃない
セキュリティー不全
「ねぇ、しろー」
「あ?」
「おかえり」
そう言って背中に張り付くとぶっきら棒に 暑い と言った
もう、夏だ
しろと過ごす、もう何年目の夏だろう
私たちの関係はいたってシンプルで、小さい頃、生まれた時からの幼馴染だ
誕生日は一日違いで同じ病院の隣のベット
学校もずっと一緒で
死ぬときも一緒だった
こちらに来たのも一緒で、何一つ変わらなかった
なんで覚えてるかなんてのは、現世を行き来してれば分かる
お葬式だって一緒だった
何一つ、私はしろに隠し事をしたことがない
それは多分、しろも一緒で
このしろを愛しいと思う気持ちは隠しているわけではない
行動、言葉、しろに対する態度、何かもに私の気持ちは明らかに反映している
しろにもし、 好きなのか? と訊かれれば私はすぐに うん と答えるだろう
周りの人から訊かれた時も、迷わず頷いた
しろの気持ちは知らないけど、私は何故かしろもそうだと思ってる
確信なんてないけど
訊こうとも思わないほど自信がある
それはやっぱり、しろと過ごす中で感じてきた絆があったから
この曖昧で不安定なただ平穏な日々に私は満足しているから
何をしようとも思わない
それは、やっぱりしろも一緒だと思う
今さら行動を起こす必要はないのだ
「しろ」
「あ?さっきからなんだよ」
「何もなーい」
えへへと笑えば、 変なヤツ と軽く微笑んで頭を小突かれた
しろは相変わらずモテて、時々妬く時もあったけど、しろは何があっても家に帰ってきた
今は同棲している
付き合ってるわけでもないのに変な話かもしれないが、私は一人では生きていけない
私はしろがいないと生きれない
それにこうして家で待っていれば、しろの身に何が起こったかが分かる
今のところしろは毎日必ず帰って来てくれるから
いつかは離れなきゃいけない時が来るかも知れないけど
そんなこと、今はまだ考えていない
「飯はー?」
「あぁ、今作る」
立ち上がってご飯を作る
こんなの、日常的なこと
コンコン
ドアをノックする音
「しろ出てー」
「あぁ」
がちゃりとドアが開くとそこには可愛らしい女の子
どうやらしろのあとを追いかけてきたらしい
「あ?誰だ」
「あの、私」
そんな女の子の言葉を遮ってしろは言う
「の知り合いか?」
「え?知らないよ、しろに用でしょ」
台所から少し顔を出して答える
女の子はとても驚いていた
そして同時に、屈辱とでもいった顔をして私を睨んだ
慣れてるとはいえ、この目はいつ見ても嫌だ
「オレか?」
「いえ…もういいです。突然お邪魔してすいませんでした」
「あぁ…?」
しろは分かってない
「何だったんだ?」
「・・・自分で考えなさい」
「は分かるのかよ?」
「まぁ・・・ね」
「ふーん・・・」
しろは特に探る様子もなく、興味がないようでそれ以上話を広げようとはしなかった
「にしても、オレに用でなんでオレの家知ってんだ?」
「さぁ?誰かに聞いたんじゃ?もしくは・・・」
「そんなわけねぇよ。気配ぐらい分かる」
「案外凄腕の死神かもよ?」
「それなら知ってるはずだ。・・・物騒だな、きちんと戸締りしとけよ?」
「はいはい」
「本当に分かってんのか」
はぁ、と深いため息をつくとしろは横になった
ぴっとテレビをつける
親父。まるで親父ポーズ。まだぶつぶつ何か言ってるし。意外と心配性なしろ
そんなしろを、知っているのは私だけって、自惚れて良いですか?
「はい、ご飯できたよ」
「おう」
起き上がって一緒にご飯を食べるしろ
「美味しい?」
「あぁ」
「よかった」
当たり前の日常。それに満足している?不安定でも平穏な日常が好き?
そんなわけない
いつも思ってる
このモヤモヤした想いをどうにかできたなら、どれほど楽になれるか
でももしここを壊したら、私は
「・・・箸止まってんぞ」
「え、あぁ」
「何考えてんだよ?」
「別に、何も」
「嘘つけ」
「・・・」
「何かあったのか?」
本当に鈍感。あんたのことだよって叫んで逃げ出したかった。いや、違う。本当は、好きだよって言って抱きつきたかった。抱きしめて、ほしかった
「・・・泣くな」
「うっ・・・うるさい、あたしだって・・・泣きたいときくらい、あるよ」
「・・・もしさ」
「・・・」
「この戦いが終わって、それこそ平和な世界ができたら、」
「うっ」
「・・・泣き止めよ」
「いいから続けて」
「嫁になってくれよ」
「・・・」
「悪い、それまで」
しろは最初から私が承知するという前提で話しているようだった
それよりも今のこの、不安定な状況に謝っているようだった
本当にそうなら、やっぱりしろは誰よりも私のことをわかってくれている
「我慢するよ、それくらい・・・うっ」
「・・・大丈夫か?」
呆れた笑顔、そっと触れる手、暖かいご飯の匂いと、華奢な体
「が、好きだ」
「うぅ・・・」
「好きだよ」って抱きつくの。それが私の小さな夢。
「好きだよ」
「痛ッ」