「絶対、どこにも行かない」
それはあの夜、誓ったこと

あの夜ぼろぼろにどろどろにぐちゃぐちゃになったサスケを慰めること
なんて、できなかった
昔からの付き合いだった
うちはの敷地はとても大きかったけど、私の家はその向かいにあった
だからだいたい一緒にいて、アカデミーも一緒に登校してたし、サスケが
修行をすると言えば着いていったりもした
サスケのお母さんやお父さん、もちろんお兄さんのこともそれなりに
知っていたし、ご近所のおばさんやおじさんも知ってた
なのに、どうして気づけなかったんだろう
静かな夜に、サスケの叫び声が木霊した
なんだか心配になって家を飛び出して見に行くと、サスケはぼろぼろで、
涙を流して頭を抱えて、ただただ泣き叫んでいた
「サスケ?なに、これ…」
「あぁああぁぁぁうぅ、あぁぅああぁぁぁああぁ!」
「どうしたの?どこか痛いの?ちょっと待ってて、人呼んでくるから」
だけどサスケは私の服をつかんだ
「何?どうしたの?」
「いっ…うああぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「サスケ!?サスケ、サスケェ…」
あまりにも苦しそうに叫ぶサスケに私も冷静ではいられなくて、涙が出た
「もう…どうしちゃったのよ、サスケェ…ちょっと待っててよ…お母さん…
呼んでくるから…」
「くっ…うぁっ、ぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!」
「サスケェ…」
すると、騒ぎを駆けつけて大人たちがやってきた
「サスケ…どうしたんだ?これは…」
「サスケおかしいの!変なの!どうしよう…」
「と、とりあえず病院に運ぶんだ!」
「う、うん」
ズリズリとサスケを引っ張るとサスケは私の顔を見て、腕をつかんだ
「っ…」
「え、ん?何?」
「あいつが、あいつが殺ったんだ…全部、みんなを、う、あぁぁぁぁぁ!」
「サスケ、サスケ、もういいよ、分かったから!とりあえず病院にいこう」
私は泣き叫ぶサスケをどうにか抑えて病院へと向かった
どれくらいかたった頃、お医者さんが病室から出てきて、「会ってあげて」
といった
私は、その戸を開けるのが恐かった
「サスケ…?」
「…」
「大丈夫?」
「うん…」
「…」
自然と、何も訊けなかった
訊いちゃいけない気がした
サスケがさっき言ったあいつは、誰のことなのか、だいたい予想がついて
いたから
「復讐する」
「え?」
「絶対にあいつを、許さない」
「…」
「もっともっと強くなって、絶対に仇をとってやる…」
「サスケ…」
「…」
「ん?」
「よかった」
「え?」
「が殺されなくて」
「大丈夫だよ…それに、それは私の台詞だよ」
「…いなくならないでね」
「え?」
「だけは絶対、いなくならないで」
「うん…」
サスケの声は弱々しくて、耳を澄まさないと聞こえない
目もつかれてて細くなっているし、手も震えてる
「もしまで殺されたら、本当に、一人だ」
「…」
サスケがそんなことを言ったのは初めてだった
サスケは強がりで、怪我とかしても素直に痛いとかは言わない子だったし、
修行がきついとか、弱音を吐いたこともなかった
「大丈夫だよ」
「もっともっと強くならないと…一緒に、強く…」
「うん」
「どこにも行かないで」
「絶対、どこにも行かない」
「…ありがとう」
そういうとサスケは眠ってしまった
今思うとあんなに素直なサスケにはもう会えないのかもしれない
「っ」
びゅんっと私の目の前をクナイが遮った
「何ボーっとしてんだ…修行中だぞ」
「ごめんごめん…昔の可愛いサスケを思い出しちゃって」
「余計なこと言ってないで修行しろ」
ひゅっと飛んでくるクナイ
見事に私の顔の隣
「危ないなー私の美貌に傷がついたらどう責任とってくれんのよ」
「当てねぇよ」
わかってる
サスケはわざとクナイをそらしてくれてる
「なんかその言い方責任は取りたくないみたいな…」
「そのとおりだ」
「ひどい…私の夢はサスケのお嫁さんなのに!」
「叶いそうもないな」
「何よーずっと一緒にいてって言ったくせに…あれは嘘だったのね!」
「声がでかい」
「すいません」
でも本当のこと
私の頭の中は、本当に不安でいっぱいだ
「ねぇ、サスケ」
「あ?」
「本当に、今では、そんなこと思ってないの?」
「…」
「どっかに行っちゃっても、いいって思ってるの?」
「…」
分からない
いつからこんな風になってしまったのだろう
今一緒に修行していることも、一緒に帰ることも、一緒に歩くことも、
話すことも、いつかは、いつかはできなくなってしまうのかな
どんどん溝ができてる気がする
私とサスケの間に
私にはサスケの気持ちが分からない
「もういいよ。今日は帰るね」
「おい…」
「何?」
「…いや、いい」
私は走って家まで帰った
呼び止めてくれることを期待してた
それで、何か言ってくれると思ってた
でももう本当に、駄目かもしれない
崩れかけたものを直すには、もう一度全て壊してから作り直すしかない
はっきりしたかった
私にとってのサスケは大切な人
でもサスケにとっての私は何?
どの言葉を信じればいいのか分からない
毎日サスケは迎えに来てくれるし、修行に行くときも一緒に行く
でもそれって何なんだろう
それがなくなったら、もしも私が歩けなくなったりしたら、一緒にいること
はなくなるのかな
私の存在って何?
私は足を傷つけた
といっても、あんまり勇気がなくてクナイを刺しただけだった
でもまっすぐに刺したせいか、結構傷が深く血はなかなか止まらなかった
私は仕方なく病院へ行き、手当てをしてもらった
「どうしたの?クナイでこんなに深く傷がつくなんて…誰かからやられた
の?」
「いえ…ちょっと、簡単なトラップに引っかかっただけです」
「そう?傷が治るまでは安静にしておくのよ。全治2週間ってところね。
動くと傷が開くからね」
「はい、ありがとうございました」
病院を松葉杖をもって出ると、サスケがいた
「どうしたの?」
「それはこっちの台詞だ。どうしたんだ、足」
「あー…ちょっと簡単なトラップに引っかかっちゃって」
「トラップ?あの後任務にでも行ったのか」
「んー…ちょっと、ね」
「…送っていく」
「…ありがとう」
なんで優しくしてくれるの?
分からないよ
なのにそれも訊けずにサスケに甘えてる自分も分からない
サスケは松葉杖を持って私を支えてくれた
何も喋らない
「どうして、分かったの?」
「…たまたま、見かけた」
「そっか…わざわざ、送りに来てくれたの?」
「うるさい」
「うっ」
「病人はおとなしくしてろ」
「…はーい…」
訊きたかったのに
でも、だとしたらなんで送りに来てくれたの?
一緒にいてって言った手前、仕方なくなのかな
「あーっ!」
後ろから叫び声
そっと振り向くとさくらがいた
「な、何してるのっ!?」
「怪我しちゃって…サスケが送ってくれてるの」
「…へ、へぇ…大丈夫?私がしようか?」
「え?」
そうか、そういえばさくらはサスケが好きなんだよね
もしかするとサスケだって好きでやってるわけじゃないかも知れないし
「あ、ありがと…じゃあ」
「別にいい」
「え?」
サスケが私の声を遮るように言った
…なんか怒ってる?
「…そっか!そうだよね!じゃあ、ばいばい」
さくらは明らかに作り笑い
サスケもすたすたと足早に行く
「ちょ、早いよ!」
「…悪い」
「どうしたの?」
「…オレがいるのに、さくらに頼む必要ねぇだろ」
「…あ、うん…ごめん」
「…ふん」
気悪くしたのかな
でも、さくらはサスケが好きなんだよ
あれ、でも私は?
私はどうなんだろう
家に着くとサスケは私をベットにそっと降ろして松葉杖を立てかけてくれた
「何か困ったことあったら言えよ」
そう言って帰った
なんでそんなに優しいの?
自然と出る涙は止まらなくて、こんな馬鹿なことをしてサスケに優しくされ
てる自分がどうしようもなく嫌になった
最初から分かってたよ
どうしようもなく好きだってこと
だからサスケの気持ちも分からなくて、不安になるし、この涙は止まら
ないし
好きだと言ってよ
「何で泣いてんだよ」
「えっ?」
サスケは目の前にいた
「な、なんで?」
「…食い物。そんなんじゃ買い物にも行けねぇだろ」
そう言って手渡された袋には私の好きなプリンとかゼリーとか…それにとろ
ろそばが入ってた
プリンは私の好きな牛乳プリンだし、ゼリーだって桃がいっぱい入ってる
やつ
なんでも知ってるね
しかもサスケがプリンとか買うなんて…恥しかったんじゃないのかな
「ありがと…」
「…なんで泣くんだよ」
「…嬉しいから」
「泣き虫」
「うるさいっ」
なんで不思議に思ったりしたんだろう
サスケは、いつもこうだ
こうなのに、なんでそんな勝手に不安になったりして、サスケに心配かけて
「ごめんね」
「何が」
「色々」
「まったくだ」
「うう…」
涙はいつまでも止まることを知らなかったけど、私はとろろそばを食べた
サスケの前でどうしても食べたかった
つゆに涙が入ってしょっぱかった
サスケはそんな私を仕方なさそうに笑いながら見てた
そして時々 鼻水 とか言ってティッシュを渡してくれた
「サスケェ…」
「なんだ」
「おいしいよぉ…」
「よかったな」
「サスケは、私が好きですか」
「あ?」
「私は、こんなサスケが大好きです」
「当たり前だ」
「…え?それはどっち?」
「自分で考えろ」
それからサスケは私が寝付くまで一緒にいてくれた
しばらく寝たふりをしてみたら、サスケはそっと頭を撫でて、デコピンを
した
思わず声を上げた私を見てくつくつと笑った
「寝たふりしてんじゃねぇよ」
「なんで分かるのぉ…」
「分かりやすいんだよ」
「…寝るね」
「あぁ」
「おやすみ」
サスケの夢を見た
その夢は淡くて、儚かったけど、不思議と安心できた
まだサスケのぬくもりが残ってる
いつまでも、愛していると、誓います