こんなのただの、痩せ我慢でしょ
本当の嘘吐きは
誰なんですか
「大丈夫?」
「こんなの、怪我のうちに入りませんぜ」
「嘘吐き」
やせ我慢をしてる総悟の腕の怪我をわざと強く消毒する。
「いっ!」
「まだまだだね」
「ひでぇなぁ」
「いつものことでしょ。黙って『痛いよー』って言ってれば、まぁそれは
それでかわいいから許せるんだよ」
「そんなの男じゃないですぜ」
もう一度強く薬を塗れば、総悟は 痛いよー と可愛く言った。
すると突然障子が開く。
そこには、懐かしい人。
「総悟ぉ、お前いつまで楽しんでるつもりだ」
「土方さん、羨ましいんですかィ?」
「そんなわけあるか」
私は、十四郎と付き合っていた。
そのあと総悟と付き合うなんて、虫がいいと思ったけど、総悟は
そんなことでオレを振るんですかィ? と言った。
もっともだ。
そんなの、十四郎にも申し訳ない。
「まったく…山崎もいねぇし…どうなってやがんだ。おい総悟、お前探して
来い」
「えー、嫌ですぜ」
「口答えすんな、さっさと行け」
そう言うと十四郎は総悟を蹴り飛ばした。(ひどい…彼女の前でそんなこと
するかなぁ。まぁ十四郎だしね)
すると遠くからぶつぶつと文句を言う総悟の声が聞こえてきた。
「土方さーん!を襲っちゃだめですぜー!」
思わず身構える。
なんてこと言うんだ総悟。
「しねーよ!お前も何身構えてんだ」
「えへ。十四郎ならしかねないなーと思って」
「隊員の女には手を出さねぇよ。それが沖田の女でもな」
「…どう思ってる?」
「あ?何がだ」
「私が、総悟と付き合ってること」
「…別に。なんとも思っちゃいねぇよ」
「嘘吐き」
「…」
「真撰組はみーんな嘘吐きなのかな?」
「…」
「総悟も、十四郎も……何が言いたくて、総悟を追い出したの?」
「…」
こんなにも分かりやすいのに、単純なのに、きっと心の中はすごく複雑で、
もう、本当に面倒くさいね。
「…ねぇ、好き?」
「誰が、誰を」
「…言わない」
「…」
すると障子に人影が写った。あ、あの影は。
「山崎くん?」
「…ぉお、さん……げ、土方さん!」
「お前、どこ行ってた?今沖田が探してんだぞ」
「あーあ、総悟可愛そう。呼んでくるね」
反対側の、外に面した方の障子を開けるとすぐそこに総悟の気配を感じた。
「総悟ー」
外はすごく寒くて、こんな中に放り出された総悟をかわいそうに思った。
(だって雪積もってるよ!さっき蹴り飛ばされた総悟の型がついてる)
「総、」
総悟はすぐそこに、やっぱりすぐそこにいた。
障子の裏。でも見えないところにあぐらをかいていた。
うつむいて、頭の上に雪が積もってる。
十四郎に見つからないように障子を閉めてから 総悟ーどこー?
と呼びながら総悟を引っ張った。
「聞いてたんだね」
「…きっと、土方さんは、気づいてまさァ」
「…そっか」
すると急に総悟は私を抱きしめた。
「土方さんなんて、大嫌いでさァ」
「…」
「…」
「嘘吐き」
「…」
「私は、嫌いかな?」
「大好きでさァ」
「嘘?」
「本当に」
「そっか」
「…は、どうなんですかィ?」
「好きだよ」
「…ふ、わかんないですね」
「うん」
人の気持ちなんて、不安定で、不確かで、どうしようもないものなのに、
どうして人はそれを求めるんだろう。
そんなの、決まってる。
「愛してる」
愛してるから
どうしようもない罪におぼれた私は、あがくことしかできないんだろう。