「いーちゃん!」

無邪気に、本当に無邪気に、否、正確に言えばいかに無邪気っぽく私は得意の声真似で愛しい人の名前を叫んでみた。何故ならその愛しい愛しい彼は私の知らない、見知らぬ女子、しかもとても可愛らしい女子と一緒に街を歩いていたからである。うん、つまり嫉妬というやつかな。

思い切って叫んで見た私に対してその二人は

「いっくん、知り合い?」
「いや、知らない」

なんて会話をしていた。

ひどい、ひどいよひどすぎる。そんなこと言われたら、私だって、腐っても女の子、なのに。・・・腐ってないけど。

「いーちゃん・・・」

今度は声真似をする元気さえ無くなって、力なく呟いた。

すると小さなため息が、すぐそこで聞こえる。

「ごめん、本当は知り合い」
「え?」

持っていた荷物(きっとその女の子の)をその子に預けて、いーちゃんは小走りで駆け寄ってきてくれた。

「何してるの、こんなところで」
「・・・知らない」
「引きこもりの癖に」
「う」

そうですよ、私は生粋の引きこもりですよ。どこかの青色ちゃんに比べたらまだまだだけど(だってあんな環境に住んでるわけじゃないから外を出るのはやむを得ないし)引きこもりだよ。けどこんな街中には来ないよ。普通は、普通は来ないよ。こんなに人が多いと気持ち悪くなって、気分悪くなって、機嫌悪くなっちゃもん。そんなの、分かってたけど。

「気持ち悪い?」
「まだ平気」
「そう」

いーちゃんはどうしようか考えてるようだった。遠くにあの女の子を見る。なんだか少し心配そうにいーちゃんを見る。そして私と目が合う。おっと、恐い。なんか怖い。そりゃそうかな。

「僕さ、今友達と買い物してるんだ」
「うん」
「・・・」

あ、困ってる。本当に人が良いよ、いーちゃん。もう何年の付き合いだと思ってるの。いーちゃんからひどいこと言われても前みたいに泣き喚いて入院しちゃうほどじゃなくなったのに。

「いーちゃん、好き」
「ん?うん」
「・・・」
「知ってるよ」

ぽんって、頭に触れるいーちゃんの手。

「ばいばい」

笑って言ってゆっくりと帰る。そのとき女の子と目が合ったけどさっきより怖い顔をしてた。勿体無い。せっかく可愛い顔してるのに。って、私のせいか。

「すぐ帰るよ」
って、背中から聞こえたいーちゃんの声。

それなら私はいーちゃんの部屋で待ってようかな。今日の話をじっくり聞かせてもらわなきゃならない。




私の頭の中はいーちゃんでいっぱい。





「ねぇ、いっくん今の誰?」
「うーん・・・愛人?」
「愛人!?ってことは妻もいるの!?」
「うん」

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