たとえ、愛してるとささやいてくれなくても。











我侭は言わないよ、言ってあげないよ。これは私の、強がりだけど。













「 行かないで 」



もし、私がそう言ったらどんな顔をする?

驚いたかな
困ったかな
喜んだかな
悲しんだかな



少なくとも、今、私は、寂しいよ。エド。





エドがこの小さな故郷、リゼンブールから旅に出て、もう半年になる。

たまーに、本当にたまーに帰ってきたりもする。時々は手紙をくれたりするけど、電話は滅多にくれない。恥かしがりやで意地っ張りだから、よっぽどの用がないとかけてきてくれない。私から、かけたいけど、それは無理な話。それに、電話でエドの声を聞くと我慢できなくなる。この口が余計なことを言う前に、私は受話器を置かなければならない。


どうすればよかったかなんて、誰にも分からない。
誰が間違ったかなんて、誰にも分からない。
誰のせいでもなく、誰のせいでもあって、そんな考えが延々とぐるぐる廻っている。


私はいつも通りの何も変化のない毎日を過ごす。ウィンリィと話すこともあるけど、エドの話は一切出てこない。エドの話をすると私が我慢できなくなるのを、ウィンリィは知っている。


いつだっただろう。エドを好きだと、想ったのは。
そのときは、こんなことになるなんて、少しも思ってなくて、ただ、純粋にエドを想ってた。


でも、今では濁った感情が私の周りを取り巻いている。


好きよ、とても、大好き。ぐちゃぐちゃにどろどろに掻き乱したい位、大好きよ。だからいけないの。愛し過ぎてる。これ以上ないくらい。だから、言ってしまうかもしれない。怒って、泣いて、崩れて、壊れてしまうかもしれない。そんな私を、エドに見せる訳にはいかない。昔、一度、なりかけたことがあった。その時はウィンリィに迷惑をかけて、本当に悪いって思ってる。



こんな、どうしよう。今は、とても弱ってる。なんでだろう、いつもは、ここまでいかないのに。どうしよう、気持ち悪い。吐きそう。吐いたら、楽になるのかな。エドに、エドに、会いたい、ね。






「おい、大丈夫か?」



気分の悪さのあまりに、幻が見えたかと思った。でも、それは幻じゃなくて、本物の、きちんとした、エドだった。私の前に、立っている。心配そうに、私の顔を覗き込んでる。あぁ、エドだ。

「大丈夫…なんで…?」
「びっくりしたか?」

にひひと、悪戯そうに笑うエド。

「驚かせてやろうと思ってな。それよりも、すげー顔色悪いぞ。きちんと食ってんのか?」
「食べてるよ。」
「そうか、それじゃあ、ウィンリィ達の所にも行って来るか。も一緒に行こうぜ。」

私に、一番に会いに来てくれたんだ。

「…うん。」


夢みたい、会えるなんて。


「どうして急に?」
「やー…ちょっとな。ほれ。」

と、エドの機械鎧をみるとボロボロだった。また、何かあったんだね。エドは何も話してくれないけど。一体、どんなことをしてると、こんな頑丈な機械鎧がこうも、ボロボロになってしまうのだろう。

「またやったんだね。もー、ウィンリィがかわいそう。」
「オレだろ?かわいそうなのは、オレ!これからどんな目にあうかー…。」
「頑張ってね。そして死なないでね。」
「助けろよ。」
「♪〜♪」
「おい。」

「エド、おかえり。」
「…ただいま、。」


強く、強く、抱きしめて、エド。でも、エドはきゅっと軽くしか抱きしめてくれなかった。それでも、嬉しかった。嬉しかった、本当に。エドの体温に、触れてること。エドは離れようとしたけど私が手を離さなかったからエドはもう少しこのままでいてくれた。そのときのエドはきっと照れていただろうなーって想像がつく。小さな体には筋肉がきちんとついていて、旅のつらさを教えてくれる。エドの、あったかい、懐かしいにおいがする。

「…?」
「ん、ごめんごめん。行こうか。」
「あ、あぁ。」


その後、会話はなかったけど、私とエドは手をつないで、ウィンリィ達の家に向かった。ウィンリィはきちんとエドから連絡を受けていたみたいで、(直接機械鎧のことを話すのは嫌なのだろう)怒りの出迎えをしてくれた。


その日、私は、ウィンリィン達の家に泊まらせてもらうことにした。

エドは今、隣の部屋で寝てるんだなぁ…と思う。いつ、帰ってしまうんだろうか。いや、いつ、行ってしまうんだろうか。すると、コンコンとノックする音と、エドの声が聞こえてきた。


、起きてるか?……寝てる…か。」

エドの、多分ちょっと緊張している声が聞こえてきた。おかしくて思わず笑ってしまった。


「起きてるよ。」

ベットから起きてドアを開ける。

「何?」
「あ…えーと…ちょっと話さねぇかなー…って思ったんだけど…眠いか?」
「ううん、大丈夫。どうぞ。」
「オジャマシマス。」
「私の部屋じゃないけどね。」
「それもそうだな。」

ベットにふたりで座った。

「久しぶりだな、本当に。」

電気はつけてなかったけど、月明かりが眩しくて、エドの髪が反射して綺麗に光っていた。

「うん。なんも連絡してくれないんだもん。」
「悪ぃ悪ぃ。」
「……。」

何も言うことがなくなった。言いたいこと、たくさん、たくさんあるのに、な。

「あー…えーと…なんてゆーか…お前、無理してんだろ?」
「え…?」
「ウィンリィから聞いた。ウィンリィだけじゃなくて、オレにも、きちんと言えよ?なんかあったら。」
「エド?」
「ん?」
「大好き。」


ぎゅっと、強く、強く、抱きついた。

?お前、どうかしたのか?」

そんな私に、エドは照れながらも驚いていた。でも、きちんと抱きしめてくれた。


「私、エドのことすっごいすっごい好きよ。自分でも、嫌になるくらい好き。」
「うぇあ?あ、え、そうか…あー…で?」

エドは恥かしいのかオドオドしてる。

「だからね、エド。一つだけ、お願い、いい?」
「あ、あぁ。」
「キスして。」
「…はっ?」
「キス、して。」
「…。」

エドはもうすっごいすっごい真っ赤で、暗がりでも分かるくらい真っ赤になってた。


「苦しいくらいに、キスしてください。」

「………後悔しても知らねーぞ。」


ぱたんと押し倒される音が響いた。




たとえ、愛してるとささやいてくれなくても。

あなたのことを愛しく想うよ。

この熱を持った唇が二度と冷めないような、熱い、熱い、キスをして。







我侭は、言わない。これは、エドのためなんかじゃなくて、私のプライドなの。
エド、私はあなたのプライドには触れないから、だから、私のくだらないプライドも、全て、見過ごしていてね。いつか、プライドなんかいらないくらいに、本当に強くなって。君を愛し続けられる、いい女になるから。




"I dont say Selfishness; never say. This is my bluff." The end...





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