「私のこと、大好きだよね。」










いつだって君は












「久しぶり」

会うのは本当に本当に久しぶりで。エドはすごく驚いていて。それがちょっと嬉しくて。

「なんで、ここにいるんだ?」

エドの目は点になっていて本当に驚いていたので、おかしかったけどちょっと悪かったかなとも思った。
突然目の前に現れたんだから驚くのも無理はない。

「んー…買い物?」
「わざわざ中央までか?」
「今のは口実でー、実は会いに来たんだよ。」

にっこりと笑う。
エドは、は?と言ったあと大きくため息をつくと、とりあえず宿に行くぞって一言行って、ついて来いと言わんばかりにずんずんと歩き出した。その小さな(口には出せない)背中と早歩きでそっけない態度は変わらないな、と思った。
エドがいつまでたっても喋らなかったので私から話しかけた。

「エドー。」
「何だよ。」
「歩くの早いよ。」
「…。」

エドは徐々に、本当に少しずつだけど、歩く速さを落としながら私の半歩前ぐらいリードして隣を歩いてくれた。素直じゃないなぁ、とも思ったけどその意地っ張りな優しさがすごく愛しくて、懐かしかった。
顔がゆるんで、少し笑ってしまったせいでエドはちょっとムッとしたけどきちんと隣にいてくれてる。

「アルは?」
「宿だ。」
「…エド一人で何してたの?」
「何って、」
「あ。」

と、エドをからかう言葉を見つけたので無理やりにエドの言葉をさえぎった。

「もしかしてアルに秘密でナンパですか?可愛い子いた?」
「なっ…」

エドのアンテナがピンと立つ。(なんでだろう。)

「お前はオレをなんだと思ってんだよ!」

エドがこっちを向く。やっと、向いてくれた。

「エドだよ。」

にっこりと笑って、伝える。

「…。」
「私はエドに会えて本当に嬉しいんだけど。エドはどうなのかな?」

するとエドはふっと笑って変わってないなぁと呟き、いつものエドのとびきりの笑顔で、嬉しいよと言ってくれた。


それからしばらくは恥ずかしいのか話しかけてくれなかったし、半歩前よりも二歩前ぐらいのところにいたけど、ギリギリで見えるそのエドの耳が真っ赤だったのを私はきちんと知ってる。
しばらくはエドのために話しかけなかったけど、エドがさっき何をしていたのか本当に気になり出したので訊いてみた。

「エド、それで結局可愛い子は見つかったの?」
「あぁ?」

あきらかに機嫌が悪くなった声が聞こえた。

「私よりも、可愛い子。」

するとエドはやっと私に聞こえるぐらいの声で、んなもんいねぇよと言ってくれた。

ごめんね、と呟いて、エドの手をとろうかと思ったけど、こんな人前じゃあきっと握り返してはくれないから仕方なくエドの服のすそをつかんだ。

「で、本当は何をしてたの?」
「…さぁ。」

言えない事なのか。アルをわざわざおいて行くくらいだからよっぽどなことなんだろう。別に、深く問い詰めたりしなかった。

「アルに隠し事しちゃだめだよ。」
「…別に…お前にはいいのかよ。」
「どうだろう。強制はしないけど…私も隠し事でいっぱいかもしれないし。」
「何っ!?」

エドが振り向いた。顔は怒ってる。

「そこら辺は許してくれないのね。」

冗談で言ったのに本気で返してくるエドがおかしくて笑ってしまった。

「それよりも、まだつかないの?宿。」
「もうつく。」

ぷい、とまたそっぽを向かれてしまった。でも、洋服のすそはきちんとつかんだままだったし、エドも決して振り払おうとはしなかった。

エドの言ったことは本当だったみたいで、3分もしないうちに宿についた。

「アルー!」

と、エドはドアを乱暴にノックする。

「兄さん?待って、今開けるよ。」

鍵を開けるカチャカチャという音がした。でも、それより、そんなことより、久しぶりに聞いたアルの声に感動した。

ガチャ

「早かったねー、どうし…」

アルの反応は分かり易かった。

っ!?」
「うん。久しぶりだね、アル。会いたかったよ。」
「僕もだけど…どうしたの?、突然。」
「うーん…買い物?」
「中央までわざわざ?」
「それは口実で、実はとても会いたくなったから会いに来たんです。」

先ほど、エドとも済ませたこの会話をするとアルはぷっと笑って相変わらずだね、と言った。

「で、お前は泊まる所とか決めてるのか?」

エドが持っていた荷物を机に置いて、こっちを向く。そういえば、買い物でもしていたのだろうか。

「泊まるところ?うーん…リゼンブールとか?」
「…は?」「…え?」

エドのは?って声とアルのえ?って声が被った。さすが兄弟、ちょっと感心。
エドが口をパクパクしながら私を指差す。

「何、お前、日帰り?」
「わかんない。だってお金しか持ってきてないし。」
「何だよそれ。」
「わかんない。今日ね、特別に、すごい会いたいって思ったんだ。そしたら汽車に乗ってて、中央にいて、歩いてて…ねぇ。」
「ねぇ、じゃねぇよ!だいたいオレに会えたのなんて偶然なんだぞ!会えなかったらどうする気だったんだよ!」
「わかんない。どうする気だったんだろう…。エド、怒ってるの?」
「当たり前だ!お前自分のことなんだぞ!わかんないじゃあ、すまねぇぞ!少しはしっかりしろ!」
「大丈夫だよ。私はこう見えてしっかりしてるよ。」
と、腕を広げて見せる。

「どこかだ!」

エドが怒鳴ったところでずっと私とエドの間で戸惑っていたアルが止めに入った。

「に、兄さん…何もそこまで…。」
「お前は黙ってろ!」

とばっちりを受けたアルがかわいそうでたまらず反抗してしまった。

「大丈夫だって、エド。私、今すごい元気だし?もしエドに会えなくても大佐とかリザさんが…。」

分かってはいたけど、エドには禁句なことを言ってしまったらしい。ピキッと思い切り音が聞こえてきた。

「大佐んとこに行く方が危険なんだよ!わかったか!?」
「えー…うん。」
「…とにかく!思い立ったら後先考えずに行動するクセ直せ!」
「…はい。」

アルがほっとしていた。

「で、今日はどうするんだ。」
「…わかん…な…(エドが睨んできた)……えっと、一緒に寝ようか?エド。」
「…………なっ!?」

エドの顔が真っ赤になった。おもしろい…けど、笑えない。(笑ったら怒られる)

「…いや、そうじゃないか…一緒に寝てください?」
「な、に、言って…!」

あ、気がつけばアルがいない。どこにいったんだろう。

「なーんて。冗談だよ。」
手をぱたぱたと振ってみせる。

「じっ…冗談…冗談だよな…当たり前だ…」
「エドがいいなら私はいいんだけどね。その反応を見る限りOKはもらえそうにないけど。」
「えっ…。」
「何?OKもらえるの?」
「もらえるわけねぇだろ!」

どーん。
エドの頭がパンクしたんだと思う、この音は。
ごめんごめん、と謝る。エドがベットに座ったから私もエドの横に座る。横顔は怒ってて、けどまだ顔は赤い。

「エドー?」
「…。」
「ごめん。」
「…。」
「ごめんなさい。」
「…これからは、気をつけろ。」
「…うん。」

口調は怒ってるけど許してくれるエド。

エドが、ベットから立ち上がる。何をしに行くのかと思えば先ほど机に置いた紙袋の中をゴソゴゾと何かを探しているようだった。見つけたのか、何かを持ってエドはもう一度、私の隣に座った。そして恥ずかしそうに、ぶっきら棒に、ほれ、と白い小さな箱を渡す。

「何?」
「いいから。」
「開けていいの?」
「あぁ。」

箱を開けると中には指輪があった。

「帰れそうになかったら、送ろうと思ってたんだけどな。」
「これ、買いに行ってたの?」
「あぁ。」
「私に、くれるの?」
「あぁ。」
「…綺麗。」

指輪の飾りはガラスのようなのもので出来ている花でとても儚くて、きっと乱暴に扱えばすぐに壊れてしまうんだろう、薄くて、繊細な造りだった。光に当たって七色に光っている。花びらの一枚一枚、色が違う。本当に、綺麗。

「つけていい?」
「あぁ。」

いつまでもぶっきら棒に答えるエド。恥ずかしいんだろうな。だから手渡しじゃなくて送ろうって思ったんでしょう?

「どこの指につけてほしい?」
「えっ…。」

動揺したエドが可愛くて思わず笑ってしまった。

「やっぱここがいいかな。」

と、薬指にはめた。プロポーズはしてもらってないけど、もう、十分だった。
薬指にはめた私を見て、エドは慌てて顔をそらした。エドの横顔が見える。


赤くなった顔。私より、少し低い肩。金色の髪が、見える。
こつん、とエドの肩に頭をのせる。
エドはちょっと驚いたみたいだったけど、そっと表情をのぞくとため息をついて笑ってた。
すると、エドの頭が私の頭にのる。


なんて、幸せだろう。

何も、変わってないのかな。

今も、この瞬間も。


「エド…?」
「あー?」
「私のこと、大好きだよね。」
「…、当たり前だ。」
「よかった。」
「お前は…どうなんだよ。」
「どうって?」
「……だから…そのー…好きかって。」
「うーん…。」
「おい。」
「大好きみたいだよ。」
「…なんだよ。」
「びっくりした?」
「…ちょっとな。」

ふたりで、顔を見合わせて笑った。
エドが私の頭をくしゃってしたのが嬉しかった。

「また、会いに来るよ。」
「あぁ…きちんと連絡しろよ?」
「したくてもできないよ。」
「あー…それもそうだったな…。」
「エドが、会いに来て。リゼンブールに。」
「わかった。」
「約束だよ?」
「あぁ。」

いい雰囲気だったけど、エドは頭を私の頭にぶつけてこつんってやったから、まぁこれもとっても嬉しかったんだけど、えろい事は期待できそうになかった。本当にお盛んな青少年なのか疑いそうになったけどエドも色々と我慢してるのだろうと勝手に頭の中で結論を出した。


もしかして私、世界で一番にエドのことが好きかもしんない。
言ってやろうって思ったけど、この言葉はまた今度会ったときにとっといてあげよう。

いつだって、君が大好きです。
だから、いつだって君も私のことを好きでいてください。


手探りでエドの手を探すとこつんと当たって、エドの方から握ってくれた。
君の安心しきった寝顔も、毛布をぐしゃぐしゃにしちゃう寝相も、ピンピンたってる寝癖も、この。この強く握った手も全てが全て、愛しいよ。







"When you" The end...





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